春の風物”いかなごのクギ煮”のお話

なかなか、暖かな春がやってきませんね。
瀬戸内海沿岸では2月下旬頃からイカナゴ漁が始まっています。イカナゴは春を呼ぶ魚として知られ、明石海峡で操業するイカナゴ漁は瀬戸内海の春の風物詩として地元に定着しています。
イカナゴの漁期は2月下旬から3月下旬までのほんの短い間しかなく、この時期に捕れたイカナゴをクギ煮(佃煮)にして保存食としています。
各家庭では、このクギ煮作りが盛んに行われ、遠く離れた兄弟や知人に送るのが年中行事のようになっています。
私も、このクギ煮作りをやっていましたが、最近はほとんど義母のお世話になっています。83歳の義母は、人にあげるのが大好きな人で、その量も半端ではありません。
今年も、3月になり、大きなざる一杯のクギ煮を戴きました。「歳取ると鍋を持ってひっくり返すのがたいへん。もう作れへんわ。今回は小さすぎで、少し固まりになってしもうたが、腕も痛しもう作らへん。」と言っていました。私は、そのクギ煮を遠く離れた兄、姉、義兄に送りました。大量のクギ煮の処分を終えほっとしました。
そして、一週間後、義母を訪ねると、「もう作らんとこと思ったが、大漁で安かったので4kg買ってきて作ってみた。今度はきれいにできた自信作や。持って帰る?」義母のうれしそうな顔を見ると、「はい戴きます。」という言葉しか出てきませんでした。妻に「いらないと言いなさい」とつつかれながら…
 次の日、郵便局で500円のレターパックを、ホームセンターでタッパーを買い求めて、九州・山口・但馬の友人に送りました。その数、8パックにおよび、添える手紙を書くのが大変でした。早々友人たちからお礼の電話やメールを戴きました。二重の意味で、本当にほっとしました。
 クギ煮は、基本的には醤油、みりん、生姜で煮るのですが、母の自慢作には、クルミが入っています。冷凍しておくと、ずっと保存ができます。ごはんの友やお酒の友として重宝されています。