以心伝心

三連休を控え、ふと親友F氏のことを思い浮かべた。久しぶりに飲みたいなあ …と思った。
昼寝をした。なぜか夢の中でもF氏酒を飲み交わしている夢を見た。“ピンポーン”のチャイムの音で目を覚ました私は、二階のカーテン越しに外を覗くと、そこにF氏の姿を見た。
彼と知り合ったのは、36年も前、同じ職場で知り合った。よく小椋桂の歌をギター片手に歌っていたロマンチストの彼。独身時代、一週間に6日はいつも一緒に飲んでいた。そしてどちらかのアパートで泊まるという、兄弟のような関係。仕事のこと、プライベートなこと何でも相談できる間柄。彼の結婚のきっかけを作ったのは私、亡くなった妻を紹介したのは彼。葬儀を仕切ったのも彼。毎年クリスマスの日には家族ぐるみでクリスマス会をした。彼の子供たちは、今でも私のことをパパと呼んでいる。
彼は、私と一歳下で、先日定年退職した。そのこともあり、「お疲れさん」の一言をかけたかった。家から20分のところにある彼のマンション。時々、彼の家で夕食をごちそうになった。
事情もあり、しばらく語り合う機会がなかったのだが、突然の訪問で、娘に手伝わせ、私なりの手料理を振る舞う。久しぶりのお酒で楽しい一時だった。
いつも、来客の時は姿を消す猫たちが、不思議に姿を現す。奇跡に近い出来事である。
妻の癌が発見され、妻が入院したとき、彼の奥さんは毎夕、夕食のおかずを作り我が家に届けてくれた。その時の恩は未だに忘れない。どうして、そこまでしてくれるのだろう。私が多少なりとも人のお世話ができるようになったのは、それからである。
そんな彼に私は、ほとんど何の恩返しもできていない。