Dom氏の三回忌

 明日・24日は、私の友人Dom氏の三回忌です。
私とはちょうど一回りもちがう年齢でしたが、血液型も誕生月も同じで、20年前、職場が一緒になって以来のつきあいでした。
 Dom氏は知識の豊富な人で、大の読書好き・新聞も隅から隅まで目を通す、今で言う”池上彰”のような人でした。どんな情報も、彼に聞けばいつもユーモアたっぷりにわかりやすく解説してくれます。
 Dom氏が退職してからも、ずっと、連絡を取り、仲間とDom氏を囲んで酒を酌み交わしたり、旅行に行ったりしたものです。英語とハングル語が堪能で、毎年、仲間と七月には海外旅行、11月には紅葉狩りの温泉旅行に行くのが恒例行事でした。旅行先では、ユーモアたっぷりの解説でいつも周囲を盛り上げ、話題豊富なDom氏の前に人が集まります。よく芦屋雁之助の「裸の大将」のまねをしてみんなを笑わせてくれました。

 若かりし頃、仕事に熱中して人間関係がぎすぎすしていた私に「○○はん、のんびりやりましょう。」といつもやんわりブレーキをかけてくれる存在でした。子育てのことや再婚のことなど相談すると「心配おまへん!あんさんなら大丈夫」と笑顔で元気づけてくれたものです。
Dom氏は退職後の私のモデルでもありました。

 そんなDom氏と新年会をした1ヶ月後、奥さんから「主人が駄目なんです」と悲痛な電話を受けました。ショックでした。病名は「急性白血病」でした。土日は午後、病室で彼のそばにいました。意識がもどってから、私がそばにいたことに気づいた彼は「○○はん!ありがとうさんです。」と笑顔で声をかけてくれました。

 病状が悪化してからは、会話もままならなくなりました。その後は、ずっと筆談で話をしました。「毎日オ酒飲ンデマスカ?」「はい」「イイデスナア」「桜ハ咲イテイマスカ?」「きれいに咲いています」「花見ニ行キタイデスナア」…私は桜の写真をめいっぱい撮ってDom氏に見せました。それが、私が会話した最後の言葉でした。
 葬儀に参列した私は恥ずかしい話ですが、人前もはばからずずっと泣いていました。それは妻を見送ったときとほとんど同じ感情でした。

 今も時々、お家におじゃまして、仏壇に手を合わせ、奥さんと懐かしいDom氏の話をします。三回忌に向け、デジタルフォトフレームに、Dom氏の写真を入れて供えようと思っています。