ネコ物語”ピッキー”のお話

 ピッキーの話です。
ピッキーは、雌ネコで5才、元々野良猫ですが、ひじょうに顔立ちの整ったかわいいネコです。子猫の頃、三匹そろって我が家の庭を散歩していました。かわいすぎて、つい、パンの耳をやってしまいました。それが、ピッキーを飼うきっかけです。野良の子猫にピッキー、ポッキー、プッシュと名前を付けました。なぜ”ピッキー”かというと、その時偶然に、ツマブキサトシの「あなたも、私もポッキ!」というコマーシャルがテレビから流れてきたのです。そのノリです。
 野良猫というのは、なつかなく、餌だけせがむのですが、ピッキーだけは、野生の能力や自分で餌を見つける能力が劣っていたのか、甘えたで、人の手に抱かれるようになりました。やがて、なつかない他の2匹は、自然に姿を消していきました。
 そのピッキーの異変(妊娠)に気がついたのは、それから数ヶ月後です。その辺の知識に疎かったのは、飼い主として失格です。しかも、私は、そのピッキーを数キロ離れた公園に連れて行きました。ピッキーは、一目散にその場から姿を消しました。ピッキーを捨てたという後ろめたさを残し、娘と家に帰りました。家族みんなで後悔しながら2日がすぎました。
 ところが、2日がすぎた夕刻、食事をしていると、聞き慣れたネコの鳴き声が玄関に響きました。ネコの帰還本能のすごさを実感しました。もう、ずっと家族の一員として扱うことを決断しました。それから数週間後、ピッキーはかわいい子猫を4匹出産しました。
 子猫たちは、知り合いでNPOで野良ネコの世話をしている方に相談し、子猫は一匹を残し、里親に出すことにしました。週末は、その方と一緒に子猫をつれて、ペットショップの前で里親を捜しました。残った一匹には、クロロと名前を付けました。室内ネコとして飼うようにアドバイスをいただき、ネコのためにテラスを取り付けました。今は、そのテラスにトイレや自作のつめとぎ台を設置しています。 ネコはとてもきれい好きで、とくにピッキーはネコ砂が汚いときは、砂をすくう道具を口にくわえ、トイレに投げ入れ、「掃除してよ」とアピールします。
 帰宅した私の車の音を聞くと、玄関でお出迎え、私が「ぴくりくちゃ〜ん」なんて声をかけていると道を歩いている人が、変な感じで振り返っていることもあります。
 一匹だけ残した、クロロは雌ネコ、体重が8キロある大ネコですが、とても俊敏です。性格はとてもシャイなねこですが、いったん火がつくとひつように甘えてきます。水を怖がらないので、娘の入浴には、いつもつきあっています。
 不思議なのは、ネコであっても、親子関係は維持されているようで、母親のピッキーが娘のクロロをずっとなめてやっている様はほのぼのとした光景です。
 ネコの世界も人間の世界と一緒に見えてきます。5匹のネコの命を私が預かっています。大げさですが、その責任の重さを感じます。