私の友人“M氏”のこと

私の友人にMimi氏がいます。彼は妻が亡くなってから17年間ずっと、8月26日の妻の命日には、律義に、夫婦そろって、花を持って線香をあげに来てくれます。
彼とは40年来の付き合いで、私の作った不要になった家具の引受人でもあります。
昨日、久しぶりに電話で話しました。「今年は、26日は、田舎に帰っているので…」「作った家具調こたつ要らないか。」の2点を話したところ、「ずらしてでも必ず行くよ。家具調こたつもいただきます!」という返事が返ってきました。

 彼とは、学生時代、下宿が一緒だった事がきっかけで知り合いましたが、お互い薄給でしたから、就職してからも、同じアパートで共同生活をすることにしました。台所を挟んで2部屋があるという間取りでしたから、お互いのプライバシーはとりあえず保たれていました。
 彼が原則、朝食とべんとうを作り、私が夕食を作るということになっていました。買ってきたものは、きちんと折半し清算しました。
 ただいくら仲がよくても、他人同士、折り合いが悪く、腹の立つこともあります。ある日、弁当を開けると板付きのかまぼこがそのまま入っていました。「やられた!」と思いました。そのおかげで、私は、職場でしばらく“かまぼこ君”と呼ばれるようになりました。
 数日後、私が弁当を作ることになりました。私は“発砲スチロール”入りの竹輪をそのまま抜かずに切って入れました。夕食の時、彼が、「今日の竹輪、変わった味がしたなあ。芯がスカスカして…」私は必死で笑いを抑えました。まさか食べるなんて…
 
 やがて、私に彼女ができ、彼女が頻繁にやってくるようになると、彼は正月に極秘にお見合いをして、さっさと結婚してしまいました。それで二人の共同生活は終わりました。(私はわけあって彼女と別れました。)

 彼は、明るく、いつも周りを楽しくさせる特別の能力を持っていました。好きな子に告白した時、「冗談でしょう」と最後まで信じてもらえなかったそうです。漫画が得意で、今でも独特のキャラで、はがきをくれます。
 
 私が再婚すると聞いて、一番に喜んでくれたのは、彼でしょう。「婚姻届の保証人はお任せ!」と漫画っぽい字で記入してくれました。
 
 たまにしか会えませんが、お互いに気心の知れた、いい友人です。